1. はじめに
近年、日本の職場には外国人スタッフの姿が当たり前のように見られるようになってきました。労働力不足の解消や多様な価値観の導入、国際市場への展開などを背景に、多くの企業が外国人の採用に積極的に取り組んでいます。こうした流れの中で、企業が直面しているのが「言語の壁」、とりわけ日本語の理解に関する問題です。
採用時点では、多くの企業が日本語能力試験(JLPT)のスコアや面接時の会話力を基準とします。しかし、「日本語が読めること」と「内容を深く理解できること」には、大きな差があります。特に問題になりやすいのが「就業規則」の理解です。
就業規則には法律用語、業界用語、曖昧な言い回しなどが含まれており、日本語を母語としない人にとっては理解が難しい部分が多くあります。たとえ文章が読めたとしても、そこに書かれた意図や背景、ルールの意味を正しく捉えられるとは限りません。
このような言葉の“読み”と“理解”の差は、業務中の小さなすれ違いから、重大なトラブルへと発展することもあります。たとえば、職場内での報告のタイミングなどのトラブル、安全配慮義務に関する、時間外労働の取り扱いなど、業務遂行に関わる重要な要素は、単なる語彙の問題ではなく、実際の解釈のズレによって混乱を生み出すのです。
本稿では、日本語の「読解力」と「理解力」の違いに着目し、外国人スタッフが職場で安心して働けるための工夫や企業の取るべき対策について考察します。具体的なトラブル事例を交えながら、今後の多文化共生社会に向けたヒントを探ります。
さらに、外国人スタッフ自身がどのような場面で「わからない」「誤解していた」と感じているのか、現場の声も紹介しながら、実践的な対応策とその効果についても触れていきます。企業だけでなく、現場の指導者や管理職が意識すべきポイントも含めて、多角的に掘り下げていきます。
2. 日本語力と就業規則理解の現状
外国人スタッフの採用に際して、日本語能力試験(JLPT)のN4以上を要件とする企業は少なくありません。N2レベルであればビジネス会話や簡単な社内文書の読み書きには対応できますが、それでも就業規則のような法律性・制度性の高い文書を完全に理解するのは難しいというのが現実です。
そもそも就業規則とは、労働条件や服務規律、安全衛生、懲戒処分などについて、従業員に対して明示される企業ルールの中核です。つまり、従業員が「どのように働くか」を左右する根本的な文書です。にもかかわらず、その文章はしばしば難解であり、日本人社員ですら一読して理解できる人は多くないのが実情です。
N4 あにはでんしゃで「通って」ます 通うのよみがなは?
N3 あす、「面接」します 面接のよみがなは?
N2 「大切」なことをまもれない人は、、、 大切のよみがなは?
N4のレベルを小学生1,2年生とすると、通勤や採用面接は読めないかもしれません。
N2レベルでも、「順守する」は読めないでしょう。
外国人スタッフにとっての最大の壁は、やはり文体の硬さや抽象性です。たとえば「服務規律を遵守(順守)する義務を負う」などの表現には、何をもって“遵守”と見なすのか、曖昧な部分が含まれています。この“曖昧さ”こそが、外国人にとって最大の混乱要因となります。
また、企業の就業規則には、業界特有の用語や略語も頻繁に登場します。製造業であれば「安全衛生管理者」「KY(危険予知)活動」、介護業界であれば「インシデントレポート」「ケアプラン」といった表現が、何の補足もなく登場します。こうした言葉が何を指すのか、どのような背景を持つのかを知らないまま読み進めれば、誤解や思い込みを生むことは避けられません。
厚生労働省や法務省が定期的に行っている調査によると、「就業規則の内容を十分に理解している」と答えた外国人労働者の割合はおよそ1割に満たず、逆に「ほとんど理解していない」「理解したつもりだったが誤解していた」と答えた人が約6割にのぼるという報告もあります。
このような事例は「言葉の問題」と一括りにされがちですが、根底には文化的価値観や職場慣習の違いが存在しています。つまり、単に「翻訳」するだけでは乗り越えられない壁があるのです。
企業側は、「伝えたつもり」「書いてあるのだから読めるはず」と考えがちですが、それでは一方通行のままです。双方向の確認、つまり「伝わっているか?」の視点が欠かせません。
そのためには、外国人スタッフの声を直接聞く機会を設けたり、彼らがどのように就業規則を捉えているのかを可視化する工夫が必要です。たとえば、就業規則の改訂時に簡単な読み合わせワークショップを開く、わからなかった箇所を共有してもらう時間を設ける、などの試みは、理解促進と信頼関係の構築の両方に寄与します。
本章では、外国人スタッフが就業規則をどう受け止めているかという現実を明らかにし、そのうえで、企業が取るべき初期対応の重要性についても示しました。次章では、「読めること」と「伝わること」の間にある溝をさらに掘り下げていきます。
3. 「読める」≠「伝わっている」
外国人スタッフが就業規則を「読んだ」と言っても、それが「理解できている」かどうかは別問題です。これは単なる日本語能力の問題ではなく、日本語という言語そのものが持つ構造的な特徴、さらには文化的な背景に深く関係しています。
日本語は、世界の言語の中でも特に「文脈依存性」が高い言語だと言われます。同じ単語でも、使われる文脈によって意味が大きく変化し、また、曖昧な表現や省略も多く用いられます。こうした表現は、日本人同士であれば「空気を読む」「常識で補う」といった暗黙の了解で補えるかもしれません。しかし、異文化圏から来た外国人スタッフにとっては、それが通じないケースが多いのです。
● 難解な表現例と誤解のリスク
たとえば、就業規則の中で頻出する次のような表現は、日本語学習者にとって大きな壁となります。
- 法律用語:「懲戒」「解雇」「休職」など、日常では使われにくく、意味が正確に伝わりにくい。
- 慣用句:「手を焼く」「水を差す」「首を突っ込む」など、直訳が通用しない比喩表現。
- 専門用語:「裁量労働制」「コンプライアンス」「インシデント」など、業界外ではなじみが薄い語彙。
- 敬語・丁寧語の違い:「いただきます」「させていただきます」「お〜になります」など、文法的な複雑さだけでなく、意図や関係性の読み取りも必要。
- こうした表現が就業規則や社内文書に多用されることで、外国人スタッフの理解を阻むだけでなく、「読めているつもり」「理解したつもり」のまま業務にあたってしまう危険もはらんでいます。
- 非言語コミュニケーションとのギャップ
さらに、日本社会では「言葉にしない情報」——いわゆる“空気”や“気遣い”——が大きな意味を持ちます。沈黙、表情、声のトーン、間合いなど、非言語的な要素によってメッセージが強化されたり、逆に否定されたりする文化です。
このような「行間を読む」コミュニケーションは、日本人には自然でも、外国人スタッフにとっては非常に難解です。たとえば、注意をやんわり伝えるために「ちょっと気をつけてね」と言っても、その意図が伝わらず、「あ、了解です」程度で済まされてしまう場合もあります。 - 翻訳しても“理解”に届かない
多くの企業では、就業規則を英語やベトナム語などに翻訳して配布する取り組みを行っています。しかし、ここにも落とし穴があります。たとえ母国語で書かれた文書を読んだとしても、「読み手が持っている文化的背景」が異なる場合、同じ文言でも意味の受け取り方が違ってくるのです。
たとえば、「始業時間を厳守すること」と書かれていても、ある国では“8時開始”とあれば“8時に着けばよい”と解釈される一方で、日本では“8時にはすでに作業に入っている状態”を意味することが多く、このギャップがトラブルを生みます。 - 現場の声:「読んだのに叱られた」
あるインドネシア人スタッフは、「マニュアルを全部読んだのに、怒られた」と語っていました。聞けば、勤務中のスマートフォン使用が禁止されていることを「なんとなく推奨されていないだけ」と解釈していたとのことです。ルールが“断定的に”禁止されていない表現だったため、曖昧なまま行動してしまったのです。
こうした声は他にも数多く存在します - 「“〜しなければならない”と書いてあったが、上司によって解釈が違った」
- 「“相談すること”とあったが、具体的に誰に聞けばいいかわからなかった」
- 「“報告義務”の範囲が曖昧で、何をどこまで話せばよいのか迷った」
これらはすべて、「読める」ことと「理解できている」ことの間にあるギャップを示す実例です。
● 解決のカギは「読み合わせ」と「問いかけ」
このギャップを埋めるために有効なのが、「読み合わせ」と「確認」の習慣です。単に文書を配布してサインをもらうのではなく、1対1あるいは少人数で読み合わせを行い、「この部分、どういう意味だと思いますか?」と問いかけることで、理解の度合いを測ることができます。
また、視覚的に補足することも効果的です。たとえば、規則の内容を図解化したり、マンガ形式で「よくある誤解と正しい対応」を紹介する資料を使ったりすることで、言葉に頼らず“体感的に”理解してもらう工夫ができます。
● 「伝わる表現」への見直しを
企業としては、就業規則やルールブックの表現を、「伝えること」を第一に見直すことが重要です。法律上必要な表現は残しつつも、その横に簡単な要約や実例を付けるだけでも、外国人スタッフにとっての理解度は大きく変わります。
たとえば:
- 【原文】「始業時間前に所定の場所にて業務開始の準備を行うこと」\n
→ 【補足】「制服を着て、8時にすぐ作業を始められるようにしておくこと」 - 【原文】「勤務中の私用携帯電話の使用は原則禁止とする」\n
→ 【補足】「休憩中はOKだが、作業中は使わないでください」
このような二重構造の文書づくりは、全社員の理解度向上にも役立ちます。
4. 難解な就業規則用語が招く誤解
就業規則には、従業員の勤務に関するあらゆるルールが網羅されています。しかし、そこに使われている用語や表現が、外国人スタッフにとって極めて分かりにくいという問題が存在します。これは「読みやすさ」の問題ではなく、用語の選定そのものが「理解させる意図になっていない」ことに起因しています。
たとえば、以下のような表現は、日本語が母語でない読者にとって混乱を招きやすい要素です。
● 専門用語・抽象用語の多用
- 職務遂行:業務を正確に行うことを意味しますが、何をもって“遂行”とするのかの基準が不明確。
- 服務規律:日常的な行動規範を指しますが、どの行動が「違反」になるかが曖昧。
- 労働条件の不利益変更:高度な法的概念であり、日本語話者でも即答できないケースがある。
これらは一見、規則文としては正確に見えますが、「初学者読み手への配慮」が欠落しています。
● 言い回しの複雑さ・曖昧さ
- 〜するものとする:命令?裁量?慣例? 文脈によって意味が変わる曖昧な定型句。
- 〜することができる:許可なのか義務なのかが読み手に委ねられているため、誤解を招きやすい。
- 〜に準ずる:基準が具体的に示されないため、適用範囲がわかりにくい。
実際に、これらの表現を読んだ外国人スタッフが「意味が分からなかった」「違う解釈をしていた」と話すケースは非常に多く、業務の現場でのミスや誤認識の元になっています。
● 文法構造の難しさ
日本語特有の文法的構造も、理解を困難にしています。
- 助詞の省略や、倒置表現が頻繁に登場する。
- 長い修飾語や、入れ子構造の文(「〜において〜を行う場合には〜の措置を講ずることとする」)が多い。
「または」「ないし」「もしくは」「または+かつの組み合わせ」 - 動詞の活用と敬語表現が混在し、平易な主語述語の関係を見失いやすい。
戦後に作られた昭和の学者たちが作った、これらの文章は、一般的な日本人でも“文構造”が難解で、人力での補足が必要不可欠になります。
● 誤解が引き起こす現場の混乱
こうした難解表現が引き金となり、以下のような具体的な混乱が現場で発生しています。
- 「職務遂行」の意味が分からず、与えられた新しい仕事を「契約外」と誤解し拒否した。
- 「〜することができる」を“やってもやらなくてもいい”と判断し、実際には義務だった項目をスルー。
- 「懲戒対象になる」という表現の“重さ”が理解されず、軽い注意程度と受け取ってしまった。
こうしたズレは、本人のやる気の問題ではなく、制度側の“伝える力の不足”に原因がある場合が少なくありません。
● 文化的背景の違いによる認識のギャップ
たとえば、日本では「時間厳守」は徹底された常識ですが、他国では「5分〜10分程度のずれは誤差の範囲」と認識されている文化も多く存在します。そこに「始業時間を厳守せよ」とだけ書かれても、どの程度の厳守が求められているのかは読み手の文化背景によって大きく異なります。
同様に「報告・連絡・相談(いわゆるホウレンソウ)」についても、日本のビジネス文化を知っている前提で使われるケースが多く、「どのタイミングで誰に何を伝えればいいのか」は明示されていないことが多々あります。
これらの文化的含意は、文書を翻訳しても伝わりづらく、明確な指示や解説を補う必要があります。
● 解決策:用語ガイドラインと“解きほぐし”資料の導入
企業が取り組める実践的な対策としては、以下が挙げられます。
- 就業規則に出てくる用語の「用語集」を別添資料として配布(多言語対応も含む)
- 原文の横に“やさしい日本語”バージョンを併記する二重構成
- 実際の現場で起きた誤解の事例と、正しい解釈を併せて提示する“トラブル防止ガイド”の作成
- 規則文だけでなく「例文」「Q&A」「図解」「イラスト」などを活用した補助資料の整備
これらの取り組みにより、就業規則が単なる“読むだけの書類”から“実際に使えるツール”へと進化し、外国人スタッフにとっての安心材料にもなります。
また、就業規則を単に「守らせるもの」としてではなく、「現場で働く上での相談相手」となるような存在に変えていくためにも、企業の姿勢が問われます。
● 「誤解を生まない文書」は、すべての人にやさしい
外国人スタッフに配慮して“やさしく書く”という視点は、実はすべての従業員にとってメリットになります。難解な規則文を読んで混乱するのは、決して外国人だけではありません。特に新卒社員や業界未経験者なども、同様に「なんとなく」で済ませてしまう危険性を抱えています。
したがって、就業規則の表現を見直し、より平易で具体的な内容へと整えることは、組織全体の情報共有力を底上げし、結果としてトラブルの防止、生産性の向上、離職率の低下にもつながるのです。
この章では、“読み手の背景を想定すること”と“それに合わせた配慮ある設計”の必要性を示しました。次章では、こうした文書改善以外にも、制度面・人材育成面から企業が取り組むべき支援策について掘り下げていきます。
5. 企業が取り組むべき対策
外国人スタッフが安心して働き、その能力を十分に発揮できる環境を整えるには、企業側の明確な支援と、制度・文化の両面からの配慮が不可欠です。ここでは、現場で今すぐ取り組める具体的な対策と、中長期的に整えるべき仕組みについて整理します。
1) 就業規則の改善
読みやすさ×伝わりやすさ
まず取り組むべきは、就業規則そのものの“伝わる化”です。
・やさしい日本語での併記:専門用語や難解表現を分かりやすく言い換えた版を並記することで、外国人だけでなく若手社員にも有益。
・図解・イラスト化:罰則、手続き、福利厚生など、文章で伝わりにくい部分はフローチャートやイラストを活用。
・音声や動画による説明:就業規則を読み上げ形式で説明する動画コンテンツの作成も有効。学習スタイルに多様性を持たせる。
2) 研修・教育:読み方を教える仕組み
就業規則を配布するだけで終わりにせず、理解度を深めるための教育機会を設けることが不可欠です。
- 導入時研修での読み合わせ:入社時に1対1または少人数での読み合わせを行い、その場で質問を受ける機会を確保。
- OJT+定期振り返り:職場で実際に規則が関係する場面に直面した時点で改めて説明・確認する。
- 動画教材やアニメーション教材:ルールを“使う場面”から逆算して説明。実例ベースのケーススタディ形式が効果的。
また、外国人スタッフ向けの語彙力強化、日本語力強化プログラム(やさしいビジネス日本語、敬語トレーニングなど)も長期的には有効です。
3) メンター制度と人材配置の工夫
- 先輩外国人スタッフをメンターに配置:
文化的に近い出身者から実体験ベースでアドバイスを受けられると、心理的安全性が高まる。 - “聞きやすい人”を明示しておく:
相談先が不明で報告をためらうケースを防ぐため、外国人スタッフ専用の“相談係”を設ける。 - 多言語対応可能な人事・労務担当者の育成:
適切にヒアリングと対応ができる人材を社内で育てる。
5) 説明責任とフィードバックの循環
- 就業規則の説明会を定期開催
年に1回など定期的に読み返し・質疑応答の場を設け、改訂時にも全体で共有。 - 外国人スタッフの声をルール改善に反映
一方的に与えるのではなく、「読みにくい」「理解しづらい」といった意見を収集・反映するしくみを。
これにより、「ルールは守らせるもの」から「ルールは育てるもの」へという考え方の転換が生まれます。
6) 外部専門家との連携
- 社会保険労務士・弁護士との協働
法的に正確でありながら、現場に沿った伝え方ができているかをチェック。 - 行政の支援施策を活用
厚生労働省や外国人支援団体が提供するマニュアル、相談窓口、研修支援制度などを積極的に活用。
このように、企業が就業規則“配布にとどまらず、理解と実践につながる「仕組みづくり」「場づくり」「人づくり」に取り組むことで、外国人スタッフが安心して力を発揮できる環境が整います。
こうした取り組みは、結果的に全従業員にとっても明瞭で使いやすいルール体系へと昇華し、職場の文化そのものをアップデートすることにもつながるのです。
6. まとめ
本稿では、外国人スタッフと日本語の就業規則の関係を軸に、「読める」と「理解できている」の違いに着目し、現場で起こり得る誤解・トラブルの実態、そして企業が講じるべき対策について多面的に検討してきました。
特に重要なポイントは、「日本語能力=就業規則理解度」ではないという事実です。日本語能力試験(JLPT)のスコアが高くても、業界用語・慣用句・法律表現・非言語的な含意などを含む就業規則を正確に理解するには、別のスキルや知識が求められます。
また、就業規則に限らず、企業文化そのものが“暗黙の了解”で成り立っている場面が多く、外国人スタッフにとっては「常識」のすり合わせが最初の壁になります。これは単に翻訳の問題ではなく、「背景をどう共有するか」という本質的な問いです。
外国人スタッフにとっての就業規則とは、“会社との約束”であると同時に、“不安を解消する拠り所”でもあります。だからこそ、制度そのものが「読める」だけでなく、「伝わって、納得される」ものである必要があります。
そしてこれは、外国人スタッフだけのためではありません。複雑なルールを“使える知識”にする工夫は、日本人社員にとっても有益です。新人や異業種からの転職者、高齢のパート職員など、多様な背景を持つ人々にとって、“誰でも迷わずたどり着ける”ような就業規則のあり方は、働きやすさの根幹に関わります。
たとえば、「報告は速さが大事」「相談してから、とは誰に?」「正当な理由とは、何を意味するのか?」といった曖昧な部分を、具体例と共に明文化しておくことは、現場の混乱や萎縮を防ぎます。
さらに、外国人スタッフ自身が「理解したつもりだったけれど、違っていた」「伝えたつもりだったのに、通じていなかった」という経験を持つことも多くあります。こうした“すれ違い”の経験は、組織の改善の種となります。彼らの声を丁寧に拾い上げることで、就業規則そのものも“育っていく”のです。
企業にとって、就業規則は単なる規定集ではなく、信頼のインフラです。誰もが同じルールのもとで働けているという安心感は、職場の安定性と一体感を育みます。そしてそのルールが、誰にとっても“見える・読める・理解できる・納得できる”ものであることが、多様性を受け入れる企業文化の出発点となります。
「読める」から「伝わる」へ。
この意識の転換が、外国人雇用を“単なる労働力確保”ではなく、“共に働く仲間づくり”へと変えていく鍵となるのです。
多文化共生は難しいテーマかもしれません。しかし、ひとつひとつの言葉を丁寧に見直すこと、ルールを誰かの立場に立って書き直すことから、確実に始めることができます。
就業規則という“文章”から、組織の未来が変わっていく。
その第一歩を、今ここから踏み出してみませんか?
🔗 Note記事はこちら → note.com/workrule