【人材開発支援助成金】
「社員教育をしたいけれど、コストが高くて手が出せない」
「非正規スタッフにも研修を受けさせたいが、経費が重い」
そんな声をよく耳にします。人材不足が深刻化する中小企業にとって、社員研修は贅沢品ではなく、生き残るための必須投資です。しかし、実際には研修費や人件費の負担が大きく、思うように教育に踏み出せない企業が多いのが現実です。
こうした課題に対応するため、厚生労働省が用意しているのが「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」です。具体的にどのように活用できるのかを詳しく解説します。
対象となる研修
人材開発支援助成金の対象となる研修は幅広く、特に10時間以上のOFF-JT研修が基本条件です。
OFF-JTとは、日常業務を離れて受ける研修のこと。外部講師を招いた集合研修、eラーニングなどのオンライン講座、専門スクールでの研修も含まれます。さらに、OJTと組み合わせた長期研修も対象になり、より大規模な助成を受けられる仕組みになっています。
助成内容(中小企業の場合)
支給は大きく分けて賃金助成と経費助成の2種類です。
- 賃金助成
研修を受ける従業員1人あたり、1時間につき800円が助成されます。さらに、一定の要件(生産性要件や計画的な人材育成への取組など)を満たせば、+200円加算され最大1,000円となります。 - 経費助成
研修にかかる費用(受講料・教材費・委託費など)の一部が助成されます。
・正社員等の場合:45%
・有期雇用労働者・パート等の場合:70%
非正規雇用者を対象にした研修は、より手厚い支援が受けられる仕組みになっているのが特徴です。
モデルケース:10時間研修(受講料3万円/1人)
例えば、受講料3万円の10時間研修を実施した場合、1人あたりの助成額は次の通りです。
・賃金助成:800円 × 10時間 = 8,000円
・経費助成:30,000円 × 70% = 21,000円
・合計助成額:29,000円
つまり、企業の実質負担はわずか1,000円。「研修費が重いから無理」と諦めていた企業でも、導入が一気に現実的になります。
介護福祉分野での活用事例
介護業界は慢性的な人手不足が続いています。その中で「経験はあるが資格を持たない職員」や「未経験から入職したパート職員」をいかに育成するかが大きな課題です。
あるグループホームでは、外国人スタッフ向けに「認知症ケア」「感染症対策」「コミュニケーション研修」などを10時間単位でまとめて実施。賃金助成と経費助成を組み合わせることで、参加費用の7割以上を助成金でカバーできました。結果として、外国人職員が安心して現場に定着し、利用者や家族からの評価も高まりました。
介護現場は夜勤やシフト制でOFF-JT研修を組みにくいと言われますが、eラーニングやオンライン講座を活用すれば分割受講も可能です。実際に、訪問介護事業所ではスマホやタブレットを使って「感染症対策のオンライン研修」を実施し、1人あたり10時間以上の受講を認定。助成金を活用することで、非正規スタッフの研修参加率が大幅に上がりました。
デイサービス事業所では、介護職員初任者研修(130時間以上のカリキュラム)を外部講座として実施しました。費用は1人あたり約12万円かかりましたが、人材開発支援助成金を申請したことで、実質的な負担は数万円に抑えられました。
よくある質問(FAQ)
Q:社員が1〜2人しかいない小さな会社でも使えますか?
→ はい、対象になります。むしろ小規模事業者のほうがメリットが大きい制度です。
Q:パートやアルバイトを研修に参加させても助成されますか?
→ はい。非正規雇用者は経費助成率が70%と高く設定されています。
Q:どんな研修でも対象になりますか?
→ 一定の条件があります。業務に関連するスキル習得や資格取得につながる研修であることが必要です。遊興目的や娯楽性の高いものは対象外です。
Q:助成金はいつ支給されますか?
→ 研修を実施し、所定の報告を行った後に支給されます。
まとめ
人材不足の時代において、最も有効な戦略は「新しい人を採ること」ではなく「今いる人を育てること」です。
人材開発支援助成金を活用すれば、教育コストを大幅に削減しながら、従業員のスキルアップ・モチベーション向上・定着率改善を同時に実現できます。
介護福祉の現場においても、初任者研修や認知症ケア研修、外国人スタッフへの研修など、幅広い研修が対象になります。これらを計画的に導入することで、離職率の低下やサービス品質の向上に直結します。
OFF-JT研修は10時間から対象、賃金助成は800円/時間(最大1,000円)、経費助成は45%(正社員)・70%(非正規)。
「研修は費用がかかるから無理」と諦めていた経営者にこそ、ぜひ知っていただきたい制度です。教育への投資は、単なるコストではなく未来への資産形成。助成金をうまく活用して、自社の人材を育て、持続的な成長につなげていきましょう。