制度の趣旨

高齢者人口の増加に伴い、定年後も働き続けたいと考える人は年々増えています。一方で企業側にとっては、人材不足やノウハウ継承の課題を解決するために高齢者雇用の推進が急務となっています。
こうした背景を受けて、厚生労働省は「65歳超雇用推進助成金」を設けています。定年の引き上げや継続雇用制度の導入、無期転換などを行った中小企業に対して、最大160万円の支援を行う制度です。

支給対象となる企業

対象は中小企業のみです。
資本金と従業員数で区分が設けられており、製造・建設・運輸は資本金3億円以下または従業員300人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下などの条件を満たす必要があります。

助成金額(中小企業)

導入内容に応じて、次のように支給額が決まります。

  • 定年の引き上げ(66歳以上70歳未満に引き上げ):100万円
  • 定年の引き上げ(70歳以上に引き上げ、または定年制廃止):160万円
  • 継続雇用制度の導入(希望者全員を66歳以上70歳未満まで継続雇用):60万円
  • 継続雇用制度の導入(希望者全員を70歳以上まで継続雇用):80万円
  • 他制度と組み合わせた無期転換制度の導入:60万円

いずれも導入を就業規則等に明記し、労働局に届出を行うことが前提です。

制度導入の流れ

  1. 現状の就業規則や雇用契約の確認
  2. 定年や継続雇用に関する制度設計(例:定年を70歳に改定)
  3. 就業規則の変更案を作成
  4. 労使合意を経て労働基準監督署に届出
  5. 制度導入後、支給申請書を労働局へ提出

制度導入から申請までの流れは比較的シンプルですが、就業規則の整備や労使協議をきちんと行うことが必要です。

企業にとってのメリット

  • 慢性的な人材不足を補える
  • 長年勤務した社員のノウハウを維持できる
  • 高齢者雇用に積極的な企業としてのブランド力向上
  • 最大160万円の助成金を得られることで制度変更のコストを軽減できる

注意点

  • 一部の社員だけを対象とするのではなく「希望者全員」を対象とする必要がある
  • 制度導入後、一定期間は継続雇用を実際に運用しなければならない
  • 形式的な就業規則変更だけでは支給されない

事例紹介

ある製造業の中小企業では、熟練工の技能継承が大きな課題でした。定年を70歳に引き上げることで、若手社員への指導役としてベテラン社員が活躍し続けられる体制を整備。結果として、助成金160万円を受給し、さらに人材育成コストの削減にもつながりました。

よくある質問(FAQ)

Q:パート社員や契約社員も対象ですか?
A:はい、希望すれば対象になります。正社員だけでなく、雇用形態にかかわらず全員を対象に含める必要があります。

Q:助成金はいつ支給されますか?
A:制度を導入し、必要書類を労働局へ提出・審査を経て支給されます。通常は数か月後に振り込まれます。

Q:就業規則の作成を外部に依頼しても大丈夫ですか?
A:はい。社労士や専門家に依頼するケースが一般的で、その際の費用を助成金で実質的にカバーできる場合があります。

まとめ

65歳超雇用推進助成金は、高齢者の雇用を後押しすると同時に、中小企業にとっても人材不足の解消やノウハウ継承のチャンスになります。
定年を70歳に引き上げる、継続雇用制度を導入するなど、取り組みやすい制度変更で最大160万円を受給できる可能性があります。

高齢者の活躍が企業力を高める時代です。人材戦略の一環として、この助成金の活用を前向きに検討してみてください。