賃上げは「負担」だけでなく「投資のチャンス」
2025年度の最低賃金は全国平均で1,100円を突破しました。過去最大の引き上げ幅ですが、特に小規模事業者からは「どうやって払うのか」という声が多く聞かれます。
しかし国は単に負担を課すだけではなく、賃上げを投資に変える仕組みを用意しています。それが「賃上げ支援パッケージ」です。
このパッケージは、5つの助成金+税制優遇で構成されており、適切に活用すれば「コスト増」ではなく「成長の起爆剤」となります。
賃上げ支援パッケージの全体像
業務改善助成金
最低賃金を引き上げつつ、設備投資や制度改善を行った場合に助成。
- 上限:最大600万円
- 例:従業員10名で時給30円引上げ+設備導入 → 約200万円助成
人材確保等支援助成金(雇用管理コース)
キャリアパスや評価制度の導入を支援。
- 上限:最大72万円
- 例:評価制度+キャリアパス導入 → 約50万円助成
キャリアアップ助成金
非正規を正社員へ転換した場合に助成。
- 1人当たり80万円
- 例:パート2名を正社員化 → 160万円助成
特定求職者雇用開発助成金
高齢者・障害者など就職困難者を雇用する場合に助成。
- 上限:240万円/人
- 例:高齢者2名をフルタイム雇用 → 最大480万円
人材開発支援助成金
教育訓練と賃上げを連動させた場合に助成。
- 上限:最大1,000万円
- 例:年間20名研修 → 数百万円の助成
法人税控除(中小企業向け賃上げ促進税制)
条件を満たせば法人税の15〜25%を控除。
- 例:税額500万円 → 最大125万円控除
ケースワークで考える現実的な使い方
ケース①:個人サロン(スタッフ2名)
- 業務改善助成金でPOSレジと空調を更新(最大240万円)。
- 給与引上げの補填に加え、職場環境も改善。
ケース②:訪問介護事業所(スタッフ15名)
- 業務改善助成金で車両更新・システム導入(最大600万円)。
- 人材確保等支援助成金でキャリアパスを整備(最大72万円)。
- 結果:給与+職場環境+キャリアの見通しをセットで改善、離職率が低下。
ケース③:製造業(社員50名)
- キャリアアップ助成金で非正規を正社員化。
- 人材開発支援助成金で技能研修を実施(数百万円規模)。
- 法人税控除を活用しコストを圧縮。
- 結果:採用力が向上し、人材が定着する企業へ。
実装のカギは「就業規則と制度設計」
助成金は単体で使っても効果が限定的です。最大限の効果を出すには、就業規則の整備が必須です。
- 昇給表や評価制度を明文化し、社員に将来の見通しを示す
- 勤怠管理や労務管理を最新システムに置き換える
- キャリアパスを文章化して助成金申請の基盤にする
就業規則は「助成金の書類」ではなく「会社の成長を描く設計図」。ここを整えれば、助成金は単なる補填でなく定着率と収益を上げる投資に変わります。
まとめ
- 最低賃金引き上げは負担だけでなく投資のチャンス
- 5つの助成金+税制優遇を組み合わせて支援を最大活用
- 個人サロンから中堅製造業まで活用事例が存在
- 就業規則と制度設計が成功のカギ
参考
- 厚生労働省「令和7年度 雇用・労働分野の助成金のご案内」
- 財務省「中小企業向け賃上げ促進税制」